NHKの『風林火山』最終回は見逃しましたが、最終回終盤のカットは『花の乱』みたいな暗いものでしたか?
“勘助の死後、信玄上洛の夢も潰え、武田家は滅亡への道を歩んでいく”というテロップが最後に出るとか…
『風林火山』の最終回は、通常放送の2回分の時間を費やして川中島合戦を描いた素晴らしいものでしたので、見逃されたことを残念に思います。
撮影場所一杯に広がる大勢のエキストラ、両軍の騎馬武者がふんだんに配置された合戦絵巻は、最近のCG合成など比べようもない大迫力に仕上がっていました。なかでもGackt扮する長尾景虎が武田信玄と一騎打ちをする名場面は、スタント無しのうえ、馬を操って本陣に飛び込み、最初の一太刀を浴びせるまでワンカットで撮影されたそうです。
戦国時代の合戦のなかで両軍あわせて最大の死傷者を出したといわれる合戦で、山本勘介は命を落とします。その直前、名優・故緒形拳演じる上杉家の軍師たる宇佐美定満が、「一国を滅ぼしてまで何のために戦う」と問います。山本勘介はそれに応じることなく、ひたすら刃を振るいながら『生きるためじゃ…想うお人のためじゃ』と心で叫びます-ここから各自の台詞は無く、ただBGMが流れるなかで雑兵たちの乱戦から主将二人の一騎打ちまで戦場の場面が延々と続きます。その効果に視聴者は山本勘介の先の言葉をかみ締めるように脳裏に浮かべ、戦国という時代の凄まじさとそこに生きる男たちの生き様を見ることが出来るのでした。
このドラマは主人公・山本勘介が軍師として名を上げんとするところから始まりましたが、武田信玄に見出されてその軍師となりました。その間、信玄の側室・由布姫への思慕があり、信玄を天下人としてその子・勝頼を跡継ぎに、という野望も抱いていたのですが、最後に謙信の本陣に攻め入ろうとする信玄の嫡男・義信を体を張って止めています。このとき、山本勘介は信玄の軍師から更なる高みへ、武田家全体という大いなるものの軍師になったのだ、と感じさせられました。見事な主人公の成長物語の完結でした。
また死に行く勘介の目に、妻女山を下りて川を渡り戦場へ向かう味方の軍勢、真田家の六文銭の旗印が映り、自軍の勝利を確信するという見事な演出がありました。こうも素晴らしい物語を見せられ続けては、たとえ主役は死してもその勤めを果たした、そんな悲しみのうちにも達成感とも爽快感さえも感じさせるラストでした。
演じた内野聖陽の抜群の力量とは別に、容貌は甚だ尋常ならぬと設定されていた勘介でしたが、「勘介の中に咲く花がみえるから、怖くない」というミツの言葉が、永久に咲く一輪の花となって山本勘介への手向けとなりました。
その余韻をたたえたまま、その後の武田家や関わった人々の行く末が淡々と語られました。確かに武田勝頼の自害、戦国最強を謳われた武田軍団の滅亡を語ってはいましたが、それは決して暗いばかりのものではなく、戦乱の時代を誠意一杯生きた人々への散華たる言葉でありました。
視聴率はそこそこでしたが、男たちの戦国を真正面から堂々と臆することなく描き、まさに大河ドラマの名に相応しい近年の傑作でありました。
戦死なので暗いといえば暗いですが平蔵が戦場から生きて家族のもとへ帰れる(ってことですよね、あれ)こともあり 締めがミツだったこともありきれいに終わったと思います。
武田家のその後は番組終了後の史蹟紹介のコーナーでやってたと思います
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